小さな復讐者

〜 ぬいぐるみは知っている 〜

41 行 2026/06/21 09:43

 今日も、人間の幼体は無事だ。奴らは、弱い。俺が守ってやらないと、心が疲弊してしまう。

 身体に出来た傷は、俺と違って簡単には治らない。でも、身体の傷は自然と治る場合が多い。
 子供と呼ばれる幼体は、身体に傷を付けながら育っていく、俺と違って、傷の数だけ強くなれるようにも思える。

 しかし、心にできた傷は治らない。

 学校という幼体が集まって仕事をする場所がある。
 学校に行っている幼体が心を壊してしまう。

 幼体の心を癒すのが俺の役割だ。

 今日も、学校という所から帰ってきた、小さな幼体が俺を抱きしめながら泣いている。

 俺の身体は、布と綿で作られている。
 ”ぬいぐるみ”という物らしい。よくわからない。この児童養護施設で育った者が創造主だ。近くで本屋をやっているらしい。
 俺の創造主は、幼体が喜ぶ絵本を持ってくる。幼体は、創造主が持ってくる絵本が好きだ。
 その時に、創造主は、俺を治して直してくれる。

 幼体は、俺を大切に扱ってくれる。乱暴な奴も居るが、後でしっかりと謝ってくれる。

 年少者が俺を抱きしめて寝る。その時に、創造主が持ってきた絵本を年長者が読んで聞かせてくれる。この瞬間が俺は好きだ。

 布団に入って、俺を抱きしめた年少者が今日も泣いている。
 学校で何があったのか解らない。年少者の涙で俺の身体が重くなる。

 俺は幼体の心を癒す。
 創造主が、望んだ事だ。

 創造主が絵本を持ってこなくなった。創造主は、旅立ったようだ。よくわからないが、もう来ることができないらしい。

 俺は、決意した。
 俺が、まだ壊れていない間に、幼体が心を壊している原因を取り除こう。

 涙で重くなった身体は、俺を原因に導いてくれる。

 暗くなって、幼体が寝たら動き出そう。そして、明るくなるまでに戻ってくる。それだけのことだ。

「庵さんのぬいぐるみ。やけに重くない?それに、何か血みたいなのが付いている。誰か怪我しているか聞いてみて!」

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