復讐するは我にあり
〜 深夜の闇はすべてを知っている 〜
81 行
2026/06/21 09:44
「どうだ?」
「大丈夫。先生たちは寝ている」
「そっちは?」
「ぬいぐるみを抱いて寝ていた」
俺たちは、同じ施設で生活をしている。親の顔は知らない。学校で、”親なし”を馬鹿にされることもあるが、気にしない。俺は俺だ。
親の職業や住んでいる場所を自慢している奴らが可哀そうに思える。他に自慢することがないのか?
俺たちは、一つの作戦を実行する為に、起きていた。
本屋のおばちゃんが、俺たちの妹をイジメていた奴らの親に殺された。おじちゃんも一緒に・・・。
許せるわけがない。
俺たちは、深夜に施設を抜け出して、おばちゃんとおじちゃんの仇を取ることに決めた。
親は警察に捕まったらしいが、本当に捕まるべきは、本屋で万引きを繰り返していた奴らだ。
施設の門は閉じている。
壁を乗り越えられる場所がある。
「(よし!)」
女子もこの作戦には参加している。
皆が同じ気持ちだ。
「君たち」
「え?」
施設を抜け出した所で、声を掛けられてしまった。
「何処に行くの?」
「・・・」
答えられない。
空を見上げて、俺の頭に手を置いた。凄く温かい。
「君たち施設の子?深夜の散歩には早すぎるよ?」
「・・・。俺たちは・・・」
「いいよ。何か理由があるのでしょ?」
「・・・」
「少し、僕の散歩に付き合ってよ」
「俺たちは」「うん。目的があるのでしょ?」
「・・・」
「君たちが何をしようとしているのか知らない。でも、君たちを心配してくれる人は居ないの?」
「いない。俺たちは、親なしだ」
男は、俺に視線を合わせるようにしゃがんでから笑った。
「僕と一緒だね。僕も、大切な場所を奪われた。今、奪った奴らを始末してきた所だ」
「え?」
「君たちは、君たちが考えている以上に大切にされているみたいだよ」
「え?何を・・・」
施設から俺たちを呼ぶ声が聞こえる。
ぬいぐるみを持った妹も居る。先生方も俺たちを呼んでいる。
「なぁ」「うん」
振り返ると、男の姿はなかった。
「あの兄ちゃん。泣いていたよな?」
俺は、頭から消えた暖かさを確認してから施設に向かって歩き出した。
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