僕の背中には

117 行 2026/06/20 20:49

 私が当時働いていた部署では、インターンシップを断っていました。
 予算が無いという理由だったが、私を含めた現場はわかっていました。

 この部署は、忙しすぎる。

 作業時間は、他の部署とそれほど違いは無いはずです。
 月の残業時間が、80時間程度です。確かに、ピーク時には残業時間で150を越えますが、それは年に2~3回ある程度しかない。

 しかし、利用している技術が特殊すぎるのです。言語は、よくある物なので、勉強すれば他でも使える可能性があったのです。
 いろいろの要因が重なって、私の働いていた部署ではインターンシップを要望されても、上司が断っていました。断るだけでは問題があるので、他の部署を紹介したり、別の同級生を紹介したり、いろいろ動いていました。

 人材不足なので、人材は欲しかった。
 上司の上司から出された条件を呑むことで、翌年の増員が決定したのです。

 その条件が、”インターンシップを受け入れろ”ということでした。
 上司はいくつかの条件をつけて、受諾しました。重要だったのは、途中でリタイヤしても部署には責任は一切ないという項目でした。上司は、最初から着いてこられないと考えていたのです。

 私の部署は、大型汎用機の外部特殊記憶装置の制御基板のファームウェアを作っていました。
 こんな特殊な物を学んでも、制御基板のファームウェアを作る以外には使えません。

 そして、言語は、大型汎用機とあるシリーズ用のマシン語です。制御用に、Cを使って、計測用にFortranを使って、テストプログラムはCOBOLで書きます。また、開発用のコンパイラも部署で作っているので、コンパイラの問題なのか、プログラムの問題なのか、それとも制御基板側の問題なのか、判断が難しい場面が多くあります。
 幸いなことに、私の部署はハードウェアコーディングが出来る人間も多く、ハードウェアの部署とも懇意にしているので、情報のたぐいは問題がありませんでした。

 部署の人数は、20人に満たない少人数です。1,000人は入るフロアの一角でしかなく、フロアの島の一つの部署でした。他の部署は、最小でも100人体制です。1/5にも満たない部署なのです。しかし、売上で考えると、他の部署と同等なのです。女性も多い部署で、1/3は女性でした。その中で、私が一番年下だったのです。必然的に、インターンシップで来る学生の受け持ちは私が行う事になったのです。

「ボス」

 ボスとは、上司です。本来なら、部門長と呼ぶのが正しく、外部の人が居るときには、部長と呼ぶ必要がありますが、本人が”ボス”と呼ばれる方が良いと言っている変わり者です。

「ん?」

「学生に任せる仕事は、例の奴でいいですか?」

「そうだな。Cだけで組めるよな?」

「はい。Solarisですが、コマンドでのコーディングになるので、癖はありますが、Cだけで組めます」

「そうか、端末は?」

「え?準備も任せようかと・・・」

「うーん。Xが立ち上がる状態で、渡せば質問が減ると思うぞ?」

「はぁ・・・。わかりました」

 私の気持ちとしては、私が専門学校を卒業して、会社の研修を終わって、放り込まれたときと同じ程度で大丈夫だと思っていました。私が部署に配属されたときには、OSが入っていない端末が4台渡されただけです。開発用のMS-DOSを入れて、Solarisを入れて、汎用機につなげるようの特殊なOSを入れて、外部につなげる用の端末にOS/2とソフトを入れたのです。

「そうだ!例のツールだけど、見積もりは?」

「え?見積もり?3日仕事に見積もりが必要ですか?」

「うーん。3日か・・・。それは、専任してか?」

「いえ、いつもの感覚で、ですね」

「うーん。この部署は、少しだけ異常だからな・・・。3日か・・・。3倍で、9日・・・。もう一つくらい用意しておくか・・・」

「ボス?」

「あ・・・。期間が1ヶ月の約束でな」

「そうなのですか?なにか、考えますか?」

「うーん。最初の様子を見て、考えるか・・・」

 このときには、私も部門長も軽く考えていた。”できて”も”できなくて”も問題にはならない仕事だし、リカバリーは簡単に出来る。

 部署の打ち合わせが終わってから、数日後に彼はやってきた。

 自信満々に大学での実績を語ってくれました。
 私を含めた部署の人間は、冷めていく気持ちと、”だから”と言いたい気持ちを抑えて、彼に向き合います。仕事の内容を伝えて、作業を開始してもらった。

 彼は自尊心が強かった。
 大学では、ネットワークの構築を行って、プログラムも作っていると言っていた。

 大学とはやり方が違うとか、部署の女性陣に力説していた。彼が話しかけている女性は、私の先輩になる人で、ネットワークの専門家だ。その隣に座っている女性は、CだけではなくFortranやAdaを使いこなす才媛だ、プログラム言語だけではなく、英語とドイツ語とイタリア語を理解出来る人だ。
 彼は、女性は”機械に弱い”と勝手に思い込んでいる。彼が担当しているプログラムなら、女性陣は4-5日で完成させられるだろう。

 彼は1週間経過してもプログラムを作り上げるどころか、Xが起動する環境から開発環境の構築ができていないのだ。


近代的なビルの 18 F にオフィスを構える会社での出来事です。この業界にしては、珍しく、仕事の量と人の数がバランスよく考えられていて、忙しいけど、忙しすぎない。ちょうどよい環境だったと思われます。
職場の雰囲気もよく切羽詰まった時には、協力しあい、暇な時には皆で遊びにいく。しかし、なれ合っているわけではなく、個々の尊厳を大事にする。夢の様な会社でした。

近代的なビルの 18 F にオフィスを構える会社での出来事です。この業界にしては、珍しく、仕事の量と人の数がバランスよく考えられていて、忙しいけど、忙しすぎない。ちょうどよい環境だったと思われます。
職場の雰囲気もよく切羽詰まった時には、協力しあい、暇な時には皆で遊びにいく。しかし、なれ合っているわけではなく、個々の尊厳を大事にする。夢の様な会社でした。

その会社で、夢の様な出来事が起ったのは、あるシステムを作成するのに、人手が足りなくなりそうだが、予算的に同業者にお願いするのは難しい。そこで、社長が懇意にしている、とある学校の先生から、優秀な学生を紹介してもらう事になりました。それ自体は珍しい事ではなく、過去に何回か行って来た事なのです。学生にしてみれば、現場の雰囲気を知るいいきっかけですし、紹介した先生にしても企業とのパイプが強化されるので、就職を世話する時には有力な武器になります。企業側も、安い(半額以下)労働力を手に入れる事ができるので、3者の利益(多少のリスクはあるのですが・・・ね)に繋がる事ですので、頻繁ではないのですが、よくある話でした
この時にも、別段いつもの変わりなく、学生が派遣されてきたのです、作業時間は、授業が終わった夕方位から、皆が帰るまでっとなったのです。作業分担も、学生には、データ作成やテストの消化をお願いしたのです。
この時に派遣されて来た学生は、自分でもパソコンを持っていて、設定や簡単なプログラムは出来るとの話でしたが、それだけでプログラムをやらせるほど、会社も馬鹿ではありません。学生君がプログラムをやらせて欲しい、言い出すのにそれほど時間を必要としませんでした。最初は、やんわりと拒絶していたのですが、あまりにもしつこいので、私が担当していたロジックで、完全に分離出来る所で、なくても体勢には影響がないところをお願いしたのですが、私が実際に作業を行えば、1 日作業ですので、まぁ1 週間もあれば出来るだろう、そう考えて、1 週間の期限で作ってね。っとお願いしたのです、学生君は喜んで作業に取り掛かりました。私の方で、殆ど完成している サンプルを 渡して・・・。

最初の方は、喜んでやっていたのですが次第に、無口になり、提出期限の前日には、休んでしまったのです。
そんな事は今迄なかったので心配になって、自宅に連絡を入れても、電話に出ません。気になって、先生に連絡を取って見たところ、学校には来ているとの話でした。学生君が使用していたパソコンの中身を見て、プログラムのソースを見たのですが、私が作成したサンプルから殆ど変わっていない状況だったのです。
自分が思っていたほど作業が出来なかったんだな・・・。これだと、明日も来ないかな・・・。っと考えて、一応上司に報告だけ入れておきました。

学生君は、昼くらいに現れたのです、ちょっと以外に思ったのですが、まぁ着たからよしとしよう。出来ていなくても、その分他の仕事をして貰えばいいかぁ。そう考えていました。
学生君が、席を立って、私の方に歩いて来たのです。私は、泣き入れるかな・・・。そんな事を考えていたのですが、現実は違いました。学生君は私の所まで、ある数歩の所で、歩くのを辞めて、いきない、そこそこ大きな声で・・・
『僕の背中には、みなさんには見えない翼があるのです』
『今から見えるようにしたいと思いますので、見ていて下さい』
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
『ふん!』
『僕の背中に立派な翼が見えたと思います。実は、僕は人間ではありません』
『xxxx(聞き取れなかった)からきた、鳥人類なのです。』
『証拠に空を飛ぶ事が出来ます』
『見ていて下さいね。』
そう言うと、突然窓の方に走っていってしまいました。


おわかりだとは思いますが、高層なビルでは、窓が開かない様になってしますし、かなりの強度になっていますし、場所によっては、2 重になっている事も珍しく有りません。
学生君は、空を飛べる事を証明する機会を与えられない変わりに、証明できなかった時の命が助かったのです。
額を強く窓に打ちつけて、軽く額が割れて血が出た程度で、鳥人類である事の証明には失敗したのですが、赤い血が流れる人間である可能性を示してくれました。その後、この学生の親がの乗り込んで来て一悶着ありましたが、先生が間に入ってくれて、まるく収まる事ができました。
自業自得の感じが強いのですが、この件で会社側が私を一切擁護しなかったことと、一切の責任が私にある事の様に説明した事が、心に痼りとして残り、私は程無くして退社しました。


日々の状況確認は大事ですね。また、出来そうな場合でも、一度以上確認する事が大事ですね。

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