寒気が

24 行 2026/06/20 20:48
これは、研修が終わりに近づいて、部署に配属の発表があって、部署にあいさつに行く時の話。
私が配属する部署は、その会社の中で作業する部署ではなく、違う会社の場所を借りて作業をしていたのです。その会社までは、電車を使用して 30 分かかります。
私と一緒にその部署に配属されるのは、2 名。私を含めて、3 名の新人が配属される事になっていました。また、その会社までは、新人だけで移動する事になっていました。その会社の受付で、上司が待っていてくれる事になっていたのです。

この部署には、いろんな噂があって
『新人が配属されたら、1 年持たない。』
『年に何人も自殺者がでる。』
『配属された新人は、例外なく潰される。』
ある程度事実に基づいた噂だろうが、事実を感じるまでは信じるのはおかしいし、程度の差こそあれ、他の部署でも同じ事だろうと考えていました。しかし、同期の一人はこの噂を真実の如く捕らえてしまった。
電車で、向かう最中も・・・。ずぅ~~と、この噂の真相ばかりを気にしていました。そんな事を気にしてもしょうがないっと言っても無駄です。私は、噂よりも噂が生じた背景がきになりました。そうでしょう、こんな噂が出て来たって事は
『死んだ方がましだと思われる位、仕事が忙しい』
っと考えられるのです。そうは言っても、何を言っても無駄の様でしたので、黙っていました。この同期は、噂を勝手に解釈して想像して、妄想を膨らめていったのです。


その結果、私は信じられない光景を見る事ができました。
人は、30 分で壊れる事が出来る。この、同期は最初は、私達に聞こえる様に話していたのですが、段々俯いて何かを考えるようになり、そのうち、小声で何を呟いていたのです。『殺される』『恐い』『助けて』『辞めとけばよかった』『なんで、俺が・・・』『今ならまだ間に合う』『そうだにげよう』を繰り返していたのです、自問自答をしているようでしたが、目が虚ろで何を見ているのか解らない状態になっていたのです。そして・・・
『寒気が酷いから辞める』同期は、こう言い残して、一個前の駅で無理やり扉を開けて出ていってしまったのです。無理やりっと言うと語弊がありますが、閉まりかけていたドアに手を突っ込んで、ドアを明けさせたのですから、多分無理やりなのでしょう。私ともう一人の同期は、なす術もなく同僚の背中を見送りました。
勤務先となる会社について、上司と会社に連絡をした所、取り敢えず、私達は職場に案内されて挨拶と自分の作業場所に連れていかれました。

---後日談
その後、彼は行方不明になってしまいました。
会社を辞める理由が『寒気が酷いから・・・』休む理由じゃぁないんだから・・・ね。もう少し捻って欲しかった。
あれから、十数年経っていますが彼の『噂』が私の耳に入ってきた事は一度も有りません。彼が、今どうしているのかわかりまえんが、私に出来る事は、彼の幸せを彼の信じる神に祈るだけです。

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